滴定の原理
滴定とは
滴定とは、ある溶液に対して他の溶液を滴加し、化学反応が完了する点を見つけることによって、溶液中の特定の物質の量を測定する分析法です。一般的には、滴定試薬と呼ばれる、既知の濃度を持つ溶液を使用します。
実社会においては、身近な例をあげると、果実飲料の酸度や醤油の塩分を求めるときなどに使われています。公定法である「日本農林規格(JAS)」に測定法として滴定が規定されています。
そのほか、ワインの酸度や酒類の総酸、清酒のアミノ酸は「国税庁所定分析法」に、試薬の純度や油の劣化度(酸価・過酸化物価)は「日本産業規格(JIS)」に、医薬品は「日本薬局方」にそれぞれ滴定による測定法の規定があり、幅広く活用されています。
滴定の手順
滴定の基本的な流れです。滴定は、化学分析や定量的な実験で広く使用されており、様々な分野で重要な技術として利用されています。
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互いに反応する物質の反応式を知る
滴定の対象となる物質が、滴定試薬と反応して化学反応が進行することを前提としています。滴定の前に、滴定試薬と滴定対象物質の反応式を事前に知っておく必要があります。
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滴定試薬の濃度を知る
滴定試薬の濃度は事前に正確に測定されています。これを用いて、滴定の結果から滴定対象物質の量を求めることができます。
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滴定の過程で指示薬を使用する
滴定の過程で、滴定対象物質と滴定試薬の反応の進行状況を知るために、指示薬を使用します。指示薬はpHや色の変化などにより、滴定が完了したことを示します。
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滴定の終点を見つける
滴定の終点は、滴定対象物質と滴定試薬の反応が完了する点を見つけることが重要です。指示薬の変化により、滴定の終点を判断し、滴定の結果を得ます。
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滴定の計算
滴定の結果をもとに、滴定対象物質の量を計算します。滴定試薬の濃度や滴定の終点までに要した滴定試薬の量から計算によって、滴定対象物質の量を求めることができます。
手分析のデメリット
ガラスビュレットを使用した手分析での滴定にはいくつかのデメリットがあります。
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人間の感覚に依存する
ガラスビュレットは、滴定液を滴下する際に感覚で滴下速度を調整する必要があります。しかし、ガラスビュレットによる滴下は精密な滴下速度を一定に保つのが難しく、滴定の誤差を引き起こす可能性があります。
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終点判断に個人誤差がある
ガラスビュレットによる滴定では、指示薬による終点の色の判別を目視で行うため、個人誤差が生じる恐れがあります。
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濃度計算をしなければならない
滴定による終点判定後、ビュレットの値を目視で読み取り、計算により濃度を求める手間がかかります。
これらのデメリットを克服するために、自動滴定装置が開発され、滴定の正確性と効率性を向上させるための技術的な進歩が進んでいます。
しかし、ガラスビュレットは依然として広く使用されており、滴定における基本的な手法の一つとして重要な役割を果たしています。
自動滴定装置のメリット
自動滴定装置には以下のようなメリットがあります。
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高い正確性
自動滴定装置は、滴下速度や滴定の反応を厳密に制御するため、人間の感覚に依存することなく高い正確性で滴定を行うことができます。滴下速度の一定性や温度の影響を最小限に抑えることができるため、滴定の精度を向上させることができます。
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高い再現性
自動滴定装置は、同じ条件で複数回の滴定を行っても、ほぼ同じ結果を再現することができます。滴定の結果に生じる人間の手技によるバラツキを排除することができるため、滴定の再現性を向上させることができます。
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高速な滴定
自動滴定装置は、高速で滴定を行うことができます。滴定液の滴下速度を自動的に制御し、効率的に滴定を進行することができます。大量のサンプルを滴定する場合には、時間を短縮することができます。
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多機能性
自動滴定装置には、さまざまな滴定法や反応を実行するための機能が組み込まれています。中和滴定、酸化還元滴定、沈殿滴定、光度滴定など、さまざまな滴定法を自動的に実行することができます。
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操作の容易性
自動滴定装置は、操作が比較的簡単であり、滴定の条件を事前に設定することができます。これにより、滴定の手間を軽減し、操作のミスを減らすことができます。
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データの自動記録
自動滴定装置は、滴定のデータを自動的に記録することができます。滴定の結果や滴定条件を正確に記録し、データの管理を容易にすることができます。
これらのメリットにより、自動滴定装置は滴定の正確性、再現性、効率性を向上させるため、
研究開発や品質管理などで広く使用されています。